声の短問短答93


「アリーナのような大きな会場で歌うときのコツを教えてください」

これはボイストレーナーのお役目と存じます。
優秀な先生にお尋ねになるのが賢明ですよ。
僭越ながら、わたしはフィジカル観点から申し上げさせていただきます。
大きな会場での催行に立ち会わせていただいたことがありますが、慣れていないと、その広さに圧倒されます。
とくに下見やリハーサル(ゲネプロ)のとき、場内が明るく人が少ないため、より空間の大きさを感じます。
その感覚を持ったまま歌うとどうなるか?
どこまでも遠くに声を飛ばさなければ、最後尾の観客には聞えないのではないかとの錯覚に陥りやすくなります。
そこで、全力、いいえ、必死になります。
その結果、外喉頭は疲弊し、内喉頭も炎症を引き起します。
ガラガラした乱声ですね。
声帯結節の既往者は、一瞬にして再発の引き金を引くことになります。
また、連続の過緊張発声のため LDP にもなりやすくなります。
こうして本番はボロボロ。
それでも観衆の熱気とモチベーションがあるため、根性とテクニックで乗り切る。
ライブですから、レコーディングほど正確&美しい声でなくても構わないのでしょうが・・・
こうならないためには、空間を正しく把握する必要があります。
まず、会場に入ったら、座席の最前列の左右最端と、最上階および最後列の左右最端の場所を確認しましょう。
スタッフに協力を願い、その4点に座って(立って)もらいます。〔階数が多い場合は1階と最上階の最後尾左右最端に配置し計6人となります〕
その位置関係を頭に叩き込みます。
加えて作画すると効果的。
3パターン描きましょう。
平面図・断面図・立体図の中に、自分と4人(または6人)のポジションを線で結びます。
ラフで構いません。
この線で囲まれた中だけに最高の声を届ければよいことを認識しましょう。
囲んだ以外の部位へ声を飛ばす必要はないのです。
そうすれば、余分な力は抜けるはず。
これはライブハウスのような小さな空間からスタジアムのような大きな会場まで、すべてに通用します。
さらにハイテクニックになると、会場の形状と喉頭内部の形状を相似形にする意識を持つことで、無駄のない極上のホールパフォーマンスを成し得ます。


※声の短問短答の詳細※


追記1:場慣れしたスーパースターには、この話は無用ですね・・・


追記2:野外でのコンサートは、「声が返ってこないから不安を感じる」と「声がどこまでも飛んで気持ちが良い」の意見に二分されるようです。
by aida-voice | 2012-08-27 16:41