甲状軟骨が小さいひとに朗報です!


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先日、甲状軟骨がとても小さい方が当サロンにお越しになりました。
学生時代から「変な声」と揶揄され続け、これまで数々の耳鼻咽喉科で検査しても、すべて「問題なし」との診断結果。
挙げ句の果ては心療内科に回され、声に苦しんできたそうです。
サイトでいろいろ調べ、見つけた当サロン。
はじめは胡散臭いと思ったそうですが、喉ニュースを隅々まで読んでいくと、「自分にも当てはまる状態ではないか・・・」と感じ入り、大きな期待を持って予約したとのこと。
さらに、電話しても新規予約は満員で、結局、思い立った翌月に予約が取れ、そこから約3か月待ち。
その方が当サロンにお越しになり、まず、発した言葉が「先生、助けてください。ここが最後の砦かもしれません。よろしくお願いします」と。
そして、その言葉の声を聞き、喉元を見たわたしは「あっ、甲状軟骨(喉頭全体)が小さいための音色不良だ!」と直感しました。
か細く、こもった、小さな声。
初対面のひとは誰でも「ん?」と感じてしまうような駄声。
お互い挨拶の後、簡単な喉と声の構造を勉強していただき、検査を開始しました。
触診した瞬間、「間違いない、極小喉頭!!!」を確信しました。
それも、これまで知る中でも究極の小ささ。
通常会話や歌の発声も正常、呼吸や嚥下・摂食も問題ない。
ただ、声が悪いだけ。
つまり、この小ささは、奇形や病気ではなく、個体差の一つ。
そう、そのひとの “個性” と言い切っても良いのです。
だから、耳鼻咽喉科で調べつくしても「問題なし」と結論づけられるのでしょう。
ここでわたしは困りました。
なぜなら、古い昔、「あなたの喉は小さいので、思い通りの豊かな声を出すのは不可能です」とバカ正直に伝えたことがありました。
直後、泣き出してしまいました。
その行為をおおいに反省し、この頃は、良い点を見い出して『褒める』ことに徹しています。
少々の欠点は、運動性能でカバーしましょうと。
病気でない過緊張性発声・努力型発声や LDP (喉頭深奥ポジション)は、アプローチや運動性能向上訓練で改善することは可能です。
しかし、甲状軟骨が小さい場合、すでに存在する楽器が小さいことにほかなりません。
例えるなら、同じ構造(弦で音源を作って胴で音色を作る楽器)のウクレレとアコースティックギターでは、やはり音色が違い過ぎます。
ウクレレが悪いわけではありません。
ハワイアンには、ステキな音色のウクレレが欠かせません。
余談ですが、わたしはハワイミュージックも大好き。
数年前、ホノルル、ハワイアン歌手 Danny Couch (知人の紹介)のステージで、北の湖理事長〔元横綱〕から戴いた浴衣を着て一曲歌わせていただいた楽しい思い出があります。【Photo1】
さて、本題に戻ります。
どんなにがんばっても、ウクレレで、ギター協奏曲は弾けません。
無理なのです。
これと同じ原理。
ところで、甲状軟骨の大きさで、そんなに声が違うのか?
これに対しては「異議あり」との医師もいます。
確かに、発声に大きな変化などはありません。
病気や疾病のレベルではないから。
いったい何を言いたいのか?
それは、ほんの少し、音色が変わることに注視しているのです。
以前、わたしは東京での施術と並行して、京都の一色クリニック耳鼻咽喉科・形成外科(院長:一色信彦京都大学名誉教授)に勤めていました。
月に二回、始発の新幹線で京都に出かけ、喉頭クリニカルマッサージ外来を担当していたのです。
当時、一色クリニックで、膨大な数の声を良くする手術を見学させていただきました。
その中に、甲状軟骨形成術2型があります。
これは、痙攣性発声障害の甲状軟骨正中を割って、チタンブリッジを装着し、声門過閉鎖を阻止する目的の手術です。
一色先生の見事な手さばきと共に、素晴らしい論理の手術です。
これによって多くの患者様が助かっています。
さて、今回は痙攣性発声障害の話ではなく、甲状軟骨の大きさ。
甲状軟骨形成術2型では、上下2つのチタンブリッジの橋渡しによって、甲状軟骨の幅が1~5ミリ程度増えます。
ここに注目したわたしは、術前と術後の、声の質(音色)の変化を調べてみたのです。
もちろん、この手術の目的は「声の詰まり」を治すのが主。
調査と言っても、耳で聞いて確認するだけですから、患者様に負担をかけるものではありません。
手術の際には、必ず術前と術後の声を録音していました。
それから判断できます。
医師や患者様は、嗄声や声割れに着眼して変化をチェックしていましたが、わたしは質を重点的にチェックしました。
これは医学的観点と芸術的観点の違い。
その結果、手術後、すなわち甲状軟骨が大きくなった方が、音としての質感が向上していたケースが多かったのです。
耳の肥えた知人にも依頼して検証しましたが、同意見でした。
これらから、甲状軟骨の大きさが声の音色に影響する、すなわち、甲状軟骨が大きい場合、声帯を入れるケースやその上部の共鳴腔が大きくなり、音質は小より豊かになる可能性が高くなるとの結論に至ったのでした。
ただし、甲状軟骨が大きくなると、喉頭での存在空間の問題や重量が増すこともあり、使い勝手が悪くなって、音色を損ねるケースも多々あるため、大きいだけで「必ず優秀」との印は押せません。
これまで、甲状軟骨の小さ過ぎるひとに、わたしは当サロンのアプローチを薦めませんでした。
なぜか?
おおむね甲状軟骨の大きさに比して舌骨が存在します。
これによって、音色に最も大切であると考える咽頭共鳴腔もおのずと大きさが決まってしまいます。
このことから、甲状軟骨の小さなひとの声を良くするのは難しいと思っていたからです。
ところが、最近、その事情が変わってきました。
劇的な改善は望めませんが、咽頭共鳴腔でなく、口腔共鳴腔を主眼としたアプローチやトレーニングを行い、運動性能を上げることで、声が良くなる成果を出したのです。
そのポイントは顎関節。
顎関節は、下顎頭が前方移動(スライド運動)しながら回転(ヒンジ運動)するダブルアクションを伴う特異な関節です。
とくにスライド運動をうまく使えば、声に好影響を与えられる。
これらは、3大テノールの一人ホセ・カレーラスと旬なソプラノ歌手ディアナ・ダムラウの歌唱法を徹底的に観察したところ判明しました。
この顎関節による良声化は、いずれ詳しくお伝えする予定ですが、今回は、甲状軟骨が小さくても声を良くする道が開けてきた朗報のニュースです。
これまで、甲状軟骨(喉頭全体を含む)が小さくて施術効果が期待できない方々のアプローチには消極的でしたが、これからは違います。
まだまだ研究途中ですが、一生涯「変な声」と言われることのないよう、早々に最良の方法を見つけていきたいと考えております。
ご期待いただき、今しばらくお待ちくださいませ。
全力で研鑽を重ねてまいります。


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【Photo1】
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ダニーと共に、とっても楽しいステージでした!!!
何を歌ったかって?
もちろん…、「I LOVE HAWAII (Ah My Hawaii)」 です。





~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。なお、LDP(喉頭深奥ポジション)は病気ではなく喉筋の癖&独自の造語です。
by aida-voice | 2012-07-13 03:17