声の疲労 FV ①〔概要〕


体が疲れると声の質が低下する話題はすでにお伝えしました。
体調や精神が、声に影響する。
今回は、声を使い過ぎて(歌い過ぎて)、つまり声の乱用によって、喉(声帯や外喉頭)はどのように変化するのかお話ししましょう。
最大変化は、声の乱用によって、声帯が充血することと、声帯を動かすための喉頭各筋が乳酸代謝障害を呈することの二つ。
声帯の振幅が大きく、かつ、振動時間が長いと、声帯筋内部の毛細血管が拡張して血液が増加します。
この結果、声帯ヒダの重量が増します。
声帯がダバダバ重くなる。
声は、若干の低音化となります。(自分の思った高さを狙っているのだが、数~数十ヘルツ落ちている)
この場合の気をつける点は、筋組織のみであって、粘膜組織には血管が存在しないため粘膜は充血しないこと。
ただし、乱用が続くと、ラインケ腔に組織液(毛細血管からしみ出す血球を除いた液:血漿)が溜まって、声帯ヒダ全体が重くなることもあります。
それでも無理して使い続けると、非角化扁平上皮が焼き餅のように膨れ上がって・・・・
そう、声帯ポリープですね。
声帯ポリープは、声帯の一部分に限局されますが、さらに使い続けると、声帯全体がブヨブヨ膨れてしまうポリープ様声帯となります。
ここまで達すると、無声や投薬だけでは完治しないため、確実に手術となります。
病気に関しては、お医者さんにお任せするとして、声を使い過ぎて疲れたときの見分け方は「地声のピッチは下がるが、裏声の変化は少ない」です。
地声にも裏声にも変化が生じたときは、過労と言えるので、できるだけ早く優秀な音声専門医にかかりましょう。

ここまでのまとめ
~声の疲れレベル~
1度 《疲労》「声の質は低下しない」「地声のピッチはやや下がるが、裏声の変化は少ない」
2度 《過労》「声の質は低下しない」「地声も裏声もピッチが下がる」
3度 《病気》「声の質が低下した(ガラガラ声)」「ピッチのコントロールが難しくなる」

次に、喉頭各筋に関して。
発声は運動です。
声帯や喉頭の形状と言った楽器の要素と、筋肉による声帯活動や共鳴腔構築の要素の、掛け算(×)で声が作られてきます。
どのスポーツでも、やり過ぎれば、筋肉(ここでは骨格筋)や骨が疲労を起こします。
これと同じ。
とくに、喉頭周辺筋は、①細かく小さい、②補完形態が複雑、③曖昧性、④組織感知の難しさ、によって過度の使用に弱いと考えられます。
筋内に乳酸が溜まっても、その感覚を捉えることができないため、結局、過発声となり、声に変化が生じてから初めて使いすぎに気づくのです。
さて、筋肉は特性があり、自己の力で縮むことはできますが、伸びることができません。
つまり、他動的に伸ばさなければ、筋運動が正しく完成しないのです。
シーソーのような拮抗の作用ですね。
この拮抗運動が明確でない喉頭周辺筋では、過使用によって筋収縮が恒常的になり、ときに〔病気ではない〕過緊張性発声や LDP (喉頭深奥ポジション)を誘発し、発声運動の性能が落ちていきます。
ピッチのコントロールが困難になり、声量が落ち、嗄声(かすれやガラガラ)も出現する・・・
こうなる前に、自分の喉の状態や環境を正しく知って、じょうずに使いこなしてくださいね。
次回は、声の疲労2〔改善方法〕をお届けします。


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追記1:当サロンでは、声の過使用によって外喉頭筋群の疲労を生じた声を「ファティーグ・ボイス」、略して FV と称しています。






追記2:声の乱用後の LDP による上喉頭動脈の血流低下などによって、内喉頭の分泌液が減る報告も受けています。つまり、喉が乾燥すること。これによって、さらに声は出辛くなりますよね。(なお、甲状軟骨舌骨間の膜厚の個人差によって、この症状に違いがあることもわかっています!)






~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。なお、LDP(喉頭深奥ポジション)は病気ではなく喉筋の癖&独自の造語です。
by aida-voice | 2012-04-28 00:52