2019年 10月 10日
喉頭深奥ポジション【改訂版10.1】
お知らせ
●2019年以前に使用していた造語「LDP(ラリンクス・ディープ・ポジション)」は、10月以降「喉頭深奥ポジション」と表します。⇒ 理由
●題名変更「あなたは『喉頭深奥ポジション』になっていませんか?」⇒「喉頭深奥ポジション」
それは、喉の筋肉が硬くなり、舌骨・甲状軟骨・輪状軟骨が頚椎方向に移動すること。
実は、この状況は、確定的な病気ではありません。
耳鼻咽喉科や整形外科へ行っても、病気として取り合ってくれません。
いろいろ調べても、どこにも異常がないから。
もし『声が出ない』『痛い』『腫れている』『食べ物を飲み込めない』など、明らかに病気やケガと判断できるなら、医者から「これは治療が必要だ」と、すぐに精密検査や処置を行います。
しかし、日常生活に支障をきたしていなければ、「様子を見ましょう」「気にしないように」と諭されるだけ。
くどくどと申し立てると「それほどなら、一度、心療内科や精神科で診てもらってください」と突き放される始末。
家族や友人からも「きっとストレスじゃないの」「疲れているだけよ」「自律神経が高ぶっているのね」と気に留めてもらえない。
困り果て、漢方薬(例えば武田薬品工業のストレージなど)、鍼灸、瞑想、ついにはお祓い(おはらい)まで試すひともいます。
それでも解決しない。
こんなとき、当サロンの情報がお役に立つかも。
喉頭深奥ポジションには評価の指針があります。
①声の様子:こもっている、響きがない、声量が小さい、嗄声(かすれ声)が存在、滑舌が悪いなどがあります。
②喉の見え方:深く入っていると、喉頭隆起が見えにくい状態や甲状軟骨板縁に沿ってくぼんだ部位を確認できます。また、発声時頚部ジストニアが否定される肩甲舌骨筋Floatingのケースも、ほぼ100%喉頭深奥ポジションを誘発します。
③クリック音〔グライディングテスト陽性〕:甲状軟骨を押し込まず、左右に移動(グライディング)させると、コリッとかゴリゴリっと雑音を生じます。これをクリック音と呼称しています。なお、甲状軟骨外縁および披裂軟骨小角が頚椎前縁に直接こすれあっているのではなく、その間の軟部組織が介在して造音されます。重度の場合はクリック音時に痛みを伴うこともあります。
④筋硬度計の計測値:30Tone以上が喉頭深奥ポジションの可能性を有します。エリートボイスユーザーは10~20Tone、一般の方は20~30Toneが目安です。なお、20Tone以下は、喉頭は主に4本の懸垂機構で中空につりさげられているため、喉筋の硬さではなく喉の動きのスムーズさを表しているとお考えください。50Toneを超えると、四六時中、喉の圧迫感や詰まり感を覚えるようです。
⑤咽(むせ)の頻発:風邪や気管支炎でもないのに、日ごろ、咽が多い。実際は、自分自身よりも他者に指摘されて気づく程度の軽い場合が多い。
⑥マウスノイズ現象:舌骨が上奥移動することで舌が圧迫されて口腔内に接触する雑音が生じます。
⑦歌唱の制限:歌唱時、ⅰ高音が出ない(出しても金属音的高音)、ⅱ音域(レンジ)が狭い、ⅲ音色が暗い、ⅳ響かない、ⅴブレスが短い、ⅵリズム感が悪い(全身のリズム感はあっても歌唱になるとダメ)etc.
これらから判断します。〔当サロンは医療機関ではないため、診断や病名を決めるようなものではありません。喉頭深奥ポジションは病気ではなく、喉頭の状態を示す造語で、単なる筋肉の“癖”のようなものです…〕
加えて個人差が大きいのも特徴です。
さて、喉頭深奥ポジションは自然改善するか否か。
程度が軽かったり経過が短かったりする場合は、深呼吸・積極的なリラックス行為・頚部のストレッチング・十分な睡眠などで回復します。
このレベルならば、本人も喉頭深奥ポジション状態に気づいていないことが多いですね。
ところが、長期間にわたって放置すると、喉頭深奥ポジションが固着化します。
その根本は、筋肉の特性にあります。
筋肉は、縮む役目(運動)を担っています。
縮むことがメイン。
逆に自分の力で伸びることがほとんどできません。
つまり、縮んだら縮みっぱなし。
そして、その縮んだ状態で硬くなります。
カチカチになっていきます。
それを阻止するのが拮抗筋。
相反する方向へと他の筋肉が縮んで引っ張られます。
こうしてシーソーのように動きています。〔拮抗作用〕
ここで重要なことが一つ。
喉頭の周辺の筋肉には明確な拮抗筋が少ないのです。
主に、頚椎方向へのベクトルを持った筋肉が多い。
つまり、力が入れば入るほど深奥化現象を呈します。
そして、ついに自己の回復力では戻らなくなってします。
加えて困ったことに、二十数本ある発声関与筋は、存在も運動の感覚も持ち合わせていないこと。
もし、感覚がわかるようなひとがいれば、例えば、音階のドとラを発するときに使う筋肉の違いを正確に感じ取ることができるはず。
そんな人はこの世にいません。
結果、硬くなっている、縮んでいる、などに気づかないのです。
これが喉頭深奥ポジション。
なお、どんなに進行しても、完全に固まって動きがなくなり『声が出ない』『息ができない』『嚥下・摂食が不能』のような重篤な状態になることは決してありません。
放置しても何の問題もありません。
ご心配なく。
歌手・声優・アナウンサーやプロでなくとも声を大切にするひとには、ここからが重要。
TV番組『たけしの本当は怖い家庭の医学(朝日放送)』ではありませんが、喉頭深奥ポジションを放っておくと、ボイスユーザーにとって怖い結果になりますよ。
それは、発声力と声質の低下。
喉頭深奥ポジション状態が長く続くと、以下のようになります。
①喉が奥まることで、共鳴腔を狭くする。とくに舌骨後方の咽頭共鳴腔がかかわると、声の響きや音色が大きく損なわれる。
②舌骨甲状軟骨間が狭小化して上喉頭動脈の血流が低下。これにより声帯周辺への酸素・栄養が不足し、分泌液も減少。結果的に、発声のスタミナがなくなり、喉が乾燥しやすくなる。〔乾燥によって粘膜が脆弱になり風邪やインフルエンザにかかりやすくなる〕
③発声関連筋の硬化に伴い、舌骨上筋群も悪影響を受け、言葉をかみやすくなる。つまり、滑舌が悪くなる。
④披裂軟骨小角部が圧を受け、外側へのスライドや回転を強いられ、声門が開いてしまう。結果、声がかすれてくる。〔枯声の発現〕
⑤輪状軟骨部の深奥化により迷走神経の一部が圧迫され、緊張を伴う本番時に空咳や咽(むせ)が頻発する。〔マイクを前にして、無意識に小さくゴホンとかムムッと鳴らしているプロボイスユーザーを多数確認〕
⑥発声に力をこめるため声帯結節になりやすい。実際、声帯結節のほとんどが過緊張性発声を伴う喉頭深奥ポジション傾向。さらに過使用による微細な出血が声帯筋と声帯ヒダの間に溜まりポリープに発展するケースも多い。
どうです、声を大切にしているあなたには、とっても怖~い話でしょ。〔もちろん放置しても健康には問題ありません〕
喉頭深奥ポジションに関し、よく質問を受けます。
「なぜ喉頭深奥ポジションになるの?」
多くの原因はわかっていません。
体が硬いという言い方と同じで、癖としか言いようがありません。
よって疾病に該当しないゆえ、案ずるには及びません。
少数ですが、発声のオーバーワーク(運動部で大きな声出しを強要された、ボイストレーニングで無茶な練習を繰り返した、カラオケで長時間歌い過ぎた、能力を超えるハイトーンを出したetc.)、外的な加圧(首を絞められた、スポーツや交通事故で喉を打った、腹筋をやり過ぎたetc.)があります。
また、意外に多いのが、甲状軟骨の形状による喉頭深奥ポジション。
広角で大きな甲状軟骨は、声帯長が短く高音に適していると同時に声帯面積が広く低音にも有利。
歌唱にマッチした秀逸型。
しかしながら甲状軟骨両翼の幅が頚椎の横径を超えるため、深奥化した場合、より奥まって典型的な喉頭深奥ポジションになりやすいと考えられています。
「改善できるの?」
改善した方を知っていますが、よく分からないとしか言えません。
「ボイスケアサロンでは何をするの?」
当サロンでは各種機器と手技を駆使して改善に努めています。しかし、改善傾向でも、すぐに元に戻ってしまうことが多く、簡単にはいきません。詳しいアプローチ内容は公式ホームページ業務内容をご覧ください。
「この辛さがお前にはわかるのか?」
この問いに、わたしの過去の経験を伝えます。
是非、【喉が詰まる… 私の症例】をご熟読ください。
十二分に理解しているつもりです。
追記1:米国のメイヨークリニック喉頭機能外科セミナーで、軟部組織と喉頭深奥ポジションの関連を研究しました。以下は喉頭深奥ポジションと予想される摘出喉頭(解剖は医師・検証は會田)のスケッチ図。親指付近に触れる筋肉が硬直して声帯ヒダの開閉がスムーズでない状態。
追記3:喉頭深奥ポジションには長期に渡って慢性的に固着しているものから、緊張やストレスによる一過性のものまで、さまざまなケースの存在が確認されています。喉頭深奥ポジション状態になって時間が経過すればするほど改善も長引きます。「もしかしたら喉頭深奥ポジションではないかな?」と疑うひとは、早めの検査をおすすめします。
追記4:耳鼻科的問題や心療内科・精神科的問題で喉が詰まる場合、つまり病気は、それらの専門の医師にご相談ください。当サロンでは対応しておりません。また、筋硬度が30tone以下でグライディングテストも問題ない(クリック音がない)場合、喉頭深奥ポジションではないため、そのための施術は行っていません。
追記5:喉頭深奥ポジションにより喉の詰まり感が増すと、ゲップが多くなったり吐き気をもよおしたりするケースもあります。
追記6:「耳鼻科では異常ないと言われた」「心療内科にも行った」それでも声の問題が解決しない。そこで「ボイスケアサロンが最後の希望です!」こんな感じで意気込んで来る方が結構多くいます。しかし、ボイスケアサロンで行っているアプローチは、声質と発声力(基礎)の向上を目指した喉のスポーツトレーニングおよびリラクゼーション。病気を治したり、歌を上手くしたりなど、大それたことはできません。実際、喉頭深奥ポジションは病気や異常とは関係ありません。根本的な原因はわかっていませんが、これは筋肉の癖ではないかと思います。長い時間によって構築されたものか、急激な外力によって癖づいてしまったものか、正しい判断も難しい。当サロンでは、外喉頭の硬い筋肉を探り出し、丁寧にピンポイントマイクロストレッチを施します。しかし、その癖が解決するかどうか、やってみなければ、あるいは続けてみなければ、わからないのです。したがって、ボイスケアに過大な期待はしないでください。各人に応じた施術を心掛けていますが、思い通りにいかないひとが大勢いるのも実情です。「通ったのに良くならなかった」「プロ歌手になれなかった」と批判するのはお門違い。施術を受ける判断は、ご自身でお決めください。もし迷われているなら、お越しになるのはご遠慮ください。
追記7:2019年秋、新ボイスケアサロンとして、以下の豊富な種類が揃いました。
・喉筋リラックス超音波
・発声喉筋活性化ウルトラソニック
・喉運動性向上イオン導入
・喉筋の活性化ハイフルクエンシー
・発声関与筋力アップ低周波
・発声関与筋力ハイパーアップW低周波
・上喉頭動脈血流アップ赤色LED
・咽頭収縮筋刺激電子針
・咽頭共鳴腔拡大電子ノック
・ピンポイントマイクロストレッチ〔単独筋線維バージョンおよび複数筋線維バージョン〕
・肋椎関節可動域増大プッシュ
・加圧呼吸トレーニング
・アルティメットブレストレーニング
・舌骨引き出しアプローチ
・輪状甲状関節モビリゼーション〔垂部と斜部および関節窩に沿った回転〕
・LSE(ラリンクス・スライド・エクササイズ)〔発声運動能力に応じて回数を増減〕
・アクティブLSE〔発声しながら喉筋の筋トレ〕
・アタランストリートメント〔N発声〕
・ウォイトレーニング(輪状甲状筋負荷トレーニング)
・輪状甲状筋バックアタック
・筋反射ゴールドバイブレーション
・シンギングアプローチ
歌いながら(発声しながら)外喉頭ストレッチや発声関与筋の筋トレなどを行い、さらには、歌いながらの呼吸トレーニングもあります。ゆえに効果の期待大。声が出しやすくなり、声質が良くなり、加えて歌まで上手くなる…、プロアマ問わず、これが声や歌の最終兵器と言っても過言ではありません。
最後に、耳鼻咽喉科で問題ないと言われ、ボイスケアサロンでも問題なかった(筋硬度30tone以下でクリック音がない)場合は・・・
①胃腸科:逆流性食道炎を調べる
②呼吸器内科:慢性気管支炎や喘息を調べる
③ボイストレーニング:発声テクニックを高める
④心療内科:服薬でなくカウンセリングを受ける
⑤環境を変える:仕事や学校など生活を見直す
⑥達観する:諦めるのではなく悟りの境地を開く
これらで解決した方々もいらっしゃいます。
お試しください。
皆さまのご多幸を心よりお祈り申し上げます。
~メッセージ~
内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。なお、喉頭深奥ポジションは病気ではなく喉筋の癖&独自の造語です。
喉と声のスポーツトレーニング&リラクゼーション
ボイスケアサロン