喉頭の軟部組織の特徴


喉頭の軟部組織の特徴を簡単に述べてみます。

ポイント① 「喉は浮いている」
喉頭は、ヒトの体の中でも特異な部分。
懸垂機構〔主に茎突咽頭筋と茎突舌骨筋(靭帯も)〕で、側頭骨の茎状突起から吊り下げられています。
こんな不安定な器官はココだけ。

ポイント② 「舌骨を除き軟部組織である」
実は、甲状軟骨や輪状軟骨は骨ではありません。
軟骨ですから、軟部組織に属します。
そう、筋肉と同じくくり。

ポイント③ 「喉頭周辺筋は細かく小さい」
四肢の筋肉と異なり、喉頭の筋肉たちは、かなり細かく小さいのです。
『本当に必要あるのだろうか?』と首をかしげるような筋肉がいくつもありますね。

ポイント④ 「喉頭周辺筋の動きは理解しづらい」
前述のように訳わからない存在。
『ここで、この筋肉が大きく作用すると、逆に声は出難くなってしまうのに…』と、これまた不可思議な様態が多々存在。

ポイント⑤ 「喉頭の軟部組織は発声に無頓着」
喉の役目の最重要は“呼吸”。
もし、呼吸が5分止まってしまったら、ヒトは死んでしまいます。
次に“嚥下・摂食”。
もし、食べることができなくなってしまえば、これまた命に影響します。
そして最後に“発声”。
声は、万一、出なくても生きていけます。(ボイスユーザーにとっては死活問題ですが)
そう、生死には直接関与していません。
それゆえ、作りも動きも結構いい加減と評しても、言い過ぎではない気がします。

これらのことから、「やはり、喉頭がヒトの体の中で、最も進化が遅れているのでは!?」との仮説もうなずけます。
反回神経も、しかりですよね。
なぜ、最短距離を選ばず、心臓近くまで迂回するのだろう?
さらには、左右の長さが大きく異なるのはなぜ?
ヒトの体の中で、こんな変わった神経はありません。
最後に、喉頭の軟部組織を直接触れた感想。
ご献体くださった摘出喉頭を触らせていただいたことに感謝しながら、丁寧に、じっくり、寝食を忘れて・・・
化学薬品などで組織固定されていない摘出喉頭を数多く触知しました。
そこで感じたこと。
最初のときは「えっ、まったく触り分けることができない。なんて細密で複雑な筋肉なんだろう!」
その後、複数回トライするに従い「すごい、すごい。小さく細かいが精緻に作り上げられている。実にヒトの喉って素晴らしい。もし、神様がいらっしゃるなら感謝します」


e0146240_115158.jpg
米国で実際に触らせていただいた摘出喉頭 〔写真を絵に変換〕
「ご提供くださった心優しい方に厚謝申し上げます」







追記:外皮から、そして、内部から。わたしの宝は「触診の技術」です。そして、「聴き分ける力」でしょうか。音を判別する能力も、中学のときのHi-Fiオーディオから培ってきたもの。極上のスピーカーやイヤホンが、発声能力を高めるメカニズムに酷似しています。さらなる実験や研究が楽しくてしかたありません。さあ、次は・・・
by aida-voice | 2012-01-05 11:10