バセドー病で声が出にくい理由【過去記事再掲載】


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バセドー病とは、自律神経の調節や新陳代謝を活発化する働きの甲状腺ホルモンの機能亢進障害です。
外見的には、首前面が腫れたり、目が大きく突出したり、手指が震えたり・・・、とさまざまです。
甲状腺疾患専門病院である伊藤病院のホームページには、原因として「自己免疫」が主であると書かれています。
伊藤病院の伊藤公一院長先生には、数年前から懇意にさせていただいており、甲状腺摘出後の喉頭アプローチに関する医師向けの講演をさせていただいたこともあります。
多くの甲状腺の専門医師は、反回神経麻痺には十分な注意を払いますが、フラップマッスル(広頚筋・胸骨舌骨筋・肩甲舌骨筋・甲状舌骨筋など)の瘢痕・癒着に関しては無頓着な医師が多いのも実情。
声が出にくい症状で困っている患者さまが大勢いることを知っていただき、丁寧な手術を希望します。
伊藤病院では、その点も考慮していただけるので、声を大切にする皆さまには最善の病院ですね。
さて、なぜ、バセドー病で声が出にくくなるのか?
箇条書きで3つ列記します。
①自律神経の乱れで、発声関連筋の運動性能が低下する
②精神的不安定、イライラや集中力の低下による発声意欲の低下
③びまん性甲状腺腫によって高音が出なくなる・かすれ声になる
この③の、さらなる原因として、甲状腺が腫れて(A)上喉頭神経外枝の圧迫と(B)輪状甲状筋の圧迫が挙げられます。
Aの上喉頭神経外枝の圧迫により、輪状甲状筋の動きを阻害します。
Bでは、物理的な圧によって、筋運動そのものが運動性能を落とします。
ご存じのように、輪状甲状筋は声帯を張る役割を担っています。
そして、声帯をピンと張れなくなるため、高音発声が難しくなるのと、声門から息が漏れて『かすれ声』になります・・・
これでは発声が思い通りになりません。
実際、わたし自身(會田茂樹)も甲状腺腫瘍に罹患しており、日によって腫れてくると、声がかすれて困っています。
身を持って病気の方々のご苦労を感じています。
この先、甲状腺疾患の声のトラブルがなくなることを心より願っております。


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甲状腺は輪状甲状筋の真上に存在し左葉Aと右葉Bの大きさが異なるケースが多いのも特徴的な臓器なのです…
以前、丁寧な触知検査によって、舌骨(正中)まで覆いかぶさっている甲状腺を見つけたこともありました!!!《錐体葉Cが肥大化したものと推察される》




追記1:バセドー病で、高音が出なかったり声がかすれたりしたとき、何か対処方はないのか? あります。びまん性の腫脹を伴っても、両葉である場合は稀です。したがって、日ごろから輪状甲状筋の運動性能を上げておけば、腫れが少ない方の筋肉を十二分に活用して健常時と変わらない発声が可能となります。そして、輪状甲状筋の運動性能は、輪状甲状関節の可動域の拡大と輪状甲状筋(垂部と斜部)の筋力アップがメインとなります。病気に負けないステキな声を獲得してくださいね。



追記2:甲状腺は血流を利用して全身に分泌物を送ります。したがって、豊富な血液を必要としています。仮説ですが、喉頭周辺に分布する血管の多くは、発声のための筋肉に供給する目的ではなく、甲状腺のためだと思います。やはり、声って蔑ろ(ないがしろ)傾向にあるのは否定できませんよね。



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 會田茂樹|あいだしげき 

 







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by aida-voice | 2016-04-07 00:38