甲状腺摘出手術による反回神経麻痺の症例報告


患者さまのご許可を得て報告および掲載します。
何よりも「甲状腺手術後の声で困っている皆さんのためになるなら・・・」とおっしゃってご許可をくださったお心の優しさに感激しました。
詳しい経緯は割愛しますが、数年前、腫瘍の手術で甲状腺右葉を全摘(すべて取り去ってしまう)しました。
その際、反回神経が切れ、麻痺を起こしました。
手術直後、「声が出ない」ことに大きなショックを受けられたそうです。
執刀医からは「数ヶ月もすれば戻ってくるよ」と言われたそうですが、声は戻りませんでした。
その後、優秀な音声医の元で、披裂軟骨内転術、次に自家脂肪声帯注入を行い、かすれは残るものの声は改善しました。
さすがM先生です!
日常生活には大きな支障がない声となりましたが、やはり、①かすれる、②声が出難い・詰まる、③大きな声が出ない、④すぐに疲れて誰とも話したくなくなる、⑤「えっ?」と聞き返されるのが辛い、と言った状態が残っています。
そして、当サロンにお越しになりました。
まず、①何が起こっているのか!?、②何が原因なのか!?、を徹底的に検証してみました。
その結果、以下のことが判明したのです。
●右胸骨舌骨筋 瘢痕
●右肩甲舌骨筋中部 瘢痕
●右肩甲舌骨筋上腹部筋膜と右胸鎖乳突筋中部筋膜 癒着
●右輪状甲状筋 瘢痕?(輪状甲状関節自立可動の不全)
●喉頭周辺筋全体 硬直傾向
外皮からの写真でも確認してください。
甲状腺摘出手術による反回神経麻痺の症例報告_e0146240_22153024.jpg

そして、瘢痕や癒着が時間経過のため硬く固着している印象が否めませんでした。
つまり、それらを取り除くのに時間と根気(施療回数)が必要なのです。

触診やビデオ検査によると、この方の甲状軟骨は大きく形状も秀逸であることがわかりました。
この形状なら美声が可能と思われ、お尋ねしたところ、やっぱり以前は歌が非常にうまかったそうです。
甲状軟骨の形状やその周辺を診れば、たちどころにそのひと本来の声が想像できます。
「再び歌いたい・・・」
その思いもありました。
どうにか元の声に戻したい。
ところで元の声って?
そこで、一時的ですが瘢痕・癒着が影響しないよう、特殊な手技で試してみました。
右胸骨舌骨筋と右肩甲舌骨筋中部の瘢痕部を回避しながら、右肩甲舌骨筋上腹部筋膜と右胸鎖乳突筋中部筋膜の癒着を引き剥がし、輪状甲状関節を屈曲させて声帯の張りを強め、喉頭周辺筋全体を弛緩させて共鳴腔を活かすように動かす。
これらの動作を、同時かつ瞬時に行います。




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)





~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2010-11-02 06:37