大学准教授からの質問


山下敬介先生(国立広島大学医学部准教授)から、お電話とメールで質問をいただきました。
とても素晴らしい質問ゆえ、山下先生からご許可をいただき、やり取りの一部を掲載します。



《山下敬介先生》

山下敬介です。
突然のお電話、失礼しました。
私は、医学部で解剖学を教えています。
声の高低に興味をもち、ドレミファソラシドと声を出すと、甲状軟骨と輪状軟骨の間が次第に狭まることに気づきました。
しかし、声帯の長さはほぼ一定。輪状甲状靭帯が屈曲しても、張力が2倍も3倍も変わらないだろうに、なぜ歌手は幅広い音域をカバーできるのだろうか不思議でなりません。
いろいろご教授ください。

なお、歯学部の同僚は、口腔領域のモデル(50cmx50cmx50cmくらいの大きいもの)を作って下の問題に答えようとしています。
1)嚥下(筋と咽頭、喉頭の構造から考える)
2)表情筋
3)下顎の運動




《會田茂樹》

お電話およびメールありがとうございます。
わたしも喉頭模型を作るのが好きで数々tryしました。
素材選択が悪いため駄作が多く、可動させると壊れてしまうものばかり・・・
さて、ご質問の件ですが、残念ながら正確な事実は存じません。
ただ、多くの歌手(素人からエリートボイスユーザーまで)の外喉頭と内喉頭を観察した結果、輪状甲状関節の稼働はもちろん、声帯筋の硬度、声帯粘膜の使用割合、各共鳴腔間の利用など、種々の要素を織り交ぜながら個性豊かに高音発声を叶えていると感じています。
機械的に計ると同じ音階でも、各人で音造りの手法が若干異なっているのです。
そこに芸術性を感じるのかもしれません。
参考にならず申し訳ございません。
まずはお返事まで。





高音発声の根本を問う大変良い問いだと存じます。
山下先生、ご質問ありがとうございました。
こちらこそ、今後ともご教授くださいますようよろしくお願い申し上げます。




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)




追記:後日、以下のメールもいただきました。かなりハイレベル・・・(絶句!)

會田茂樹先生

高校の物理の教科書に書いてあるのですが、
線密度 ρ(ロー)(kg/m)の素材でできた、L(m)の長さの弦を、張力S(N)で引くと、
線密度 n = 1, 2, 3,,,,として、
弦の固有振動数 fは、
f = n/2l * (S/ρ)1/2
となります。( )1/2は、( )の中をルートしたと考えてください。
ですから、
弦の長さ l が短いほど、
線密度ρが小さいほど(弦が細いほど)、
張力 S が大きいほど、
音は高くなるということを意味します。
輪状甲状筋は収縮すると、Sが大きくなりますから、音は高くなるわけです。

山下敬介




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by aida-voice | 2010-10-30 10:17