反回神経麻痺には断裂と圧迫がある


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これまで多くの反回神経麻痺の患者さまに出会ってきました。
声帯を動かす筋肉をつかさどる反回神経。
反回神経麻痺のメカニズムをわかりやすく述べれば、①声帯の開閉は、披裂軟骨に付着する筋肉によって行われている、②反回神経は、それらの筋肉に命令を送っている、③反回神経麻痺によって、それらの筋肉が動かなくなり、声帯の開閉に影響してくる、となります。
披裂軟骨に付着する筋肉には、声門を開くための後輪状披裂筋、声門を閉じるための外側輪状披裂筋・横披裂筋・斜披裂筋があります。
以下は喉頭機能模型の写真です。
上は甲状軟骨の後ろからみたところで、下は真上からのぞいたところ。
A後輪状披裂筋、B横披裂筋、C斜披裂筋、D外側輪状披裂筋、E声帯筋です。
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麻痺した筋肉によって状況が異なります。
たとえば、後輪状披裂筋が動かなくなれば、声帯が閉じたままで開くことができなくなります。
外側輪状披裂筋が動かなくなれば、声帯が開いたままで閉じなくなります。
片側麻痺の場合、ひどい嗄声(かすれ声)、または、喉の詰まり感(息苦しい)が主症状となります。
しかし、両側麻痺では、両方の声帯が開き切ってしまい声がまったく出ない、または、両方の声帯がピタッと閉じて呼吸が困難になります。
ここで外喉頭から考察してみましょう。
なお、これらは独自の見解であることを付け添えます。
神経麻痺には大きく二つあると考えます。
断裂と圧迫。(これらに属さない他もあります)


①断裂(神経伝達が分断された状態)
◇原因
甲状腺や大動脈の手術、交通事故、首を絞められる、無謀な発声
◇特徴
片側が多いが、場合によって両側
神経回復の可能性は皆無
◇治療法
外科的手術(神経をつなぐのではなく、開いたまま動かない声帯を正中に寄せて、かすれ声を減らすための手術)
甲状軟骨形成術Ⅰ型や披裂軟骨内転術など

②圧迫(神経組織の破壊がない状態)
◇原因
ⅰ急性
断裂には至らないが、外的加圧や過度発声によって急激な力が加わり、神経伝達が阻害される
ⅱ慢性
喉頭周辺筋過緊張や喉頭捻転など慢性的な圧が原因(正座による膝窩神経圧迫で足先がしびれて動かなくなるのと同じ)
◇特徴
片側が多い
◇治療法
圧迫の原因を取り除き、声帯運動の Rehabilitation を行えば、改善可能な場合もある(神経回復速度は1㎜/日と言われているため、改善には時間が必要)

その他
原因不詳やウイルスによる麻痺(詳しくは医師にお尋ねください)


これまで、医師から反回神経麻痺と診断を受け、その後、当サロンの施療で快癒したひとを検証してみると、すべて圧迫による麻痺ではないかと推察しています。
また、完全な断裂による片側麻痺では、反対側の声帯の運動性能をアップさせること《代償性運動の開発》で、日常生活には大きく困らない程度まで改善できるひとも多くいます。
以下に、声門(両声帯のすきま)の様子の模式絵を供覧します。
上から順に、声門を閉じた状態、声門を開いた状態、反回神経麻痺で片側声帯が閉じない状態、代償性の動きで声門が閉じた状態です。
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追記1:当サロンには反回神経麻痺の患者さまが大勢お越しになっています。喉の運動能力を上げたり、喉頭環境を整えたりするのが目的で、神経麻痺そのものの治療ではありません。かすれ声や詰まり感を、少しでも改善できればと強く願って日々ケアしております。反回神経麻痺の治療は、優秀な医師にご相談ください。



追記2:以下は、摘出喉頭(解剖は医師)による触診研究時の絵(写真を絵画に変換)です。
“反回神経”を探し出している様子。
一色信彦先生から「筋肉だけでなく血管や神経も判別しなさい」と指示を受け、懸命に探し出したところ。
結構、難しいですよ。
反回神経の正確な位置がわかりますか?
答えは当サロンにて!
検証はメイヨークリニック喉頭機能外科教室(ご献体くださった方に御礼とご冥福を心より申し上げます)
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追記3:素人判断の無茶なマッサージやストレッチングで反回神経麻痺になる危険性もあります。喉の周囲は繊細です。十分ご注意くださいね。
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~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2016-02-24 03:55