輪状甲状筋トレーニング Pullメソッド


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ゴムチューブを用いて輪状甲状筋強化の方法はお伝えしました。
管状のふくらみを変形させる力をトレーニングに利用したものです。
これは輪状甲状筋の垂部に効きます。
垂部は、主に輪状甲状関節のヒンジ運動(ちょうつがい運動)を担い、ダイレクトな素早い運動ができると考えられます。
そのため、ピッチの急峻な変化、すなわち跳躍的高音発声が予想されます。
さて、もう一つの斜部。
輪状軟骨と甲状軟骨(下角)がスライドして声帯ヒダを伸長させます。
ここで、心優しい方がご献体くださった摘出喉頭をご覧ください。
アメリカ合衆国メイヨークリニック喉頭機能外科での撮影です。
検証者は會田茂樹。
何よりも、発声科学の進歩にお力添えいただいたご献体者に、心より御礼申し上げます。
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それでは簡単に解説します。。
輪状甲状関節上にある靭帯や関節包を丁寧にはがし、関節を脱臼させ、下角を前方に移動させます。
さらに、輪状軟骨の付着軟部組織(骨膜など)を取り去ると、骨体側面に、楕円形状にややくぼんだ場所を発見します。
ごく小さなくぼみですから、見逃さないように。
ここが輪状甲状関節の関節窩(かんせつか)と思われます。
輪状軟骨側面の表面は意外にもデコボコ(浅い起伏)しており、断定は難しいのが実際でした。
カラー写真をグレースケールに変更し、輪状軟骨と甲状軟骨の外枠を黒線で、関節窩を青楕円で描きました。
おおよその位置です。
青楕円の大きさを確認しましょう。
結構小さい・・・
そして、くぼみは浅い・・・
この部位でスライド運動がなされることを考えると、移動距離は短いものであると推測できます。
想像してください。
上角内側が、この関節面をなめらかに滑って行くのを。
そして、じわっと立ちあがる優美な高音になる・・・
そこで、斜部の筋トレ方法です。
まず、喉頭医学のおさらいをしましょう。
輪状甲状筋の起始は輪状軟骨上部、停止は甲状軟骨下部。
垂部も同じ。
走行角度が異なるだけ。
垂部は、読んで字のごとく、かなり垂直に近い角度。
斜部は、より斜めになっています。
大切な動く方向。
共に、起始から停止に向かって動きます。
つまり、輪状軟骨がメインで動くのです!
垂部は輪状軟骨が持ち上がるように屈曲します。
ただし、甲状軟骨もつり下げられているため、屈曲移動への関与も大きいと考えられます。
斜部は・・・
そう、輪状軟骨が動くのですから、関節窩の形状から、頚椎方向に移動するでしょう。
つまり、外皮から見れば、輪状軟骨が奥に引っ込むのです。
「えぇっ、本当に見えるの?」
上手に高音を出せる歌手で試しましたが、外皮からの確認は難しい結果でした。(喉頭の他の動きが複合してしまうためと思われます)
しかし、輪状軟骨部に指先を軽く当てて検証すると、何となく奥に引っ込んでいくのがわかります。
いよいよ斜部の筋トレ方法。
今回も、さらに上級者向けとなります。
最初に、繊細なタッチで、輪状軟骨側面の位置を正しく探し出します。
母指と示指で側面(前方部)を軽くはさみ、ほんの少し圧を加えながら女性3~5㎜男性5~8㎜前に引いて皮膚をつまみます。
そのミリ数値に達した位置は、輪状軟骨の前面ラウンド部分を越えてはいけません。
ピタッと正確な位置でなければ、効果は皆無ですよ。
もう一度、正しい位置かどうか確認しましょう。
確認が済んだら、まず、低音を出します。
ここで重要ポイント。
ゴムチューブを用いたときと同じように、咽頭および口腔内は「イ」を発する感覚で、口や唇(くちびる)は「ア」の形状にすること。(この意図することは、いずれ「ひみつの声」で解説します。実は、驚くほど重要な事実なのです!)
そして、ゆっくり徐々に高音へと移行させます。
なめらかに・・・
そのとき、奥に引っ込む瞬間を察知したら、その移動速度に合わせて、やさしく皮膚を前に引っ張りだしていきます。
引っ張り出す力が強いと、高音が出ません。
スライド運動が阻害されるから、当たり前ですよね。
拮抗する一歩手前の力加減です。
お試しください。
極上の高音獲得の一助になれば幸甚です。
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追記:複数名で試しましたが、輪状軟骨の形状によってつまみにくかったり、肌がやわらかいひとでは皮膚だけ伸びたりして、輪状軟骨の動きに影響を与えないケースが大半を占めました。優秀なあなたならおわかりのように、本来は、輪状軟骨そのものを引っ張り出したいのですが・・・。このテクニックはD難度の技ゆえ、お教えできません。よって、この斜部の筋トレは、個体差により、達成できないケースが多々あることを補足しておきます。また、ゴムチューブと同様、この筋トレは歌唱テクニックの分野ではなく、単なる Physical muscle training ですからね。歌そのものがうまくなるわけではありませんよ。そして、毎回、注意しますが、やりすぎ(回数や力加減など)には十分に気をつけてください。万が一、ケガをされても責任は持ちません。自己判断、自己責任でお願いします。そして、この筋トレは輪状甲状筋の強化であり、これによって歌がうまくなるわけではありません。「輪状甲状筋の筋トレをがんばったのに、高音の歌が上手にならない・・・」と嘆くひとがいますが、その考えは間違い。歌唱のテクニックは、喉頭医学を熟知し、あなたの喉を正確にわかってくれるボイストレーナーや音楽教師から習ってください。

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~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2016-02-27 17:15