茎突舌骨筋の拮抗筋は胸骨舌骨筋か?


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筋肉には縮む能力はあるが、積極的に伸びる能力はありません。
力を抜いて筋肉がゆるんだとき、運動方向が相対する筋肉によって伸ばされるのです。
これらを拮抗筋と言います。
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上腕二頭筋が縮むと肘関節が屈曲します。
つまり、ひじが曲がるのです。
上椀三頭筋が縮むと肘関節は伸展します。
つまり、ひじがまっすぐ伸びます。
どちらか一方の筋肉が働いて縮むとき、反対の筋肉は伸ばされるのです。
多くの骨格筋(体幹を含む)は、拮抗筋が存在して身体を動かしています。
さて、喉頭周辺筋はどうでしょう?
舌骨をつり下げる筋群(懸垂機構)と胸骨舌骨筋や肩甲舌骨筋は拮抗筋であると考えれています。
はたして本当でしょうか?
ここでは、茎突舌骨筋と胸骨舌骨筋に焦点を当てて検証します。
茎突舌骨筋は舌骨と舌を持ち上げる役目があります。
胸骨舌骨筋は舌骨を引き下げます。
これらの作用から、拮抗筋であると考えるのは妥当です。
また、発声よりも嚥下時に動く役割が大きいメカニズムです。
唾をゴクンと飲み込むと、舌骨を含む喉頭全体が持ち上げられ、終わると下がって元の位置に戻ります。
ここで、茎突舌骨筋が持ち上げ運動の一端を担い、胸骨舌骨筋が引き下げ運動に関与します。
なぜ「一端」やら「関与」など、曖昧な言葉を用いるのか?
それは、これら一連の運動は、他の筋肉も参加して複合的になっているからです。
次なる実験。
複数人に逆立ち(壁を利用して)や頭を下げた状態(頭頂を真下に向ける)で、唾を飲み込んでもらいました。
動きを見ます。
すると、喉頭が上がった状態(頭が下ですから地面方向に下がった状態)から、元に戻らない、または、少ししか戻らないひとが多くいました。
これは、胸骨舌骨筋の筋力が、重力に負けてしまった状況です。
つまり、下げる場合の運動には、喉頭全体の重みも関係していることになります。
さらに、茎突舌骨筋と胸骨舌骨筋の運動ベクトルを考えたとき、正確な拮抗には至っていません。
それどころか、合力は喉頭を深奥に移行させる向きにあるのです。
やはり複雑系・・・
舌骨をつり下げる筋群(懸垂機構)と胸骨舌骨筋や肩甲舌骨筋は、論理的にも拮抗筋であることは間違いありませんが、かなり曖昧で入り組んだ運動をしています。
したがって、個人差による筋肉の形状や動き具合により、明快な解答が難しい問題です。
私自身、まだまだ研究が足りませんね。
精進します。
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緑:舌骨、赤:茎突舌骨筋、黄:胸骨舌骨筋





追記:精緻なタッチで探ると、胸骨舌骨筋は触知できます。「あぁ、ここにあるな」とわかります。しかしながら、稀に「あれっ、筋腹が二つに割れているぞ!」「えぇ、周辺軟部組織の筋膜と癒着している・・・」と、破格も多いような気がします。これらは決して異常でも奇形でもありません。呼吸・嚥下・発声にトラブルを与えなければ『個性』の範囲内です。心配いりません。皆さんの胸骨舌骨筋の形状はどうですか?

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by aida-voice | 2016-02-15 00:57