軟口蓋は簡単にあがらない!?


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声楽では「ほらっ、もっと軟口蓋をあげて声を響かせなさい!」と指導されます。
みんな軟口蓋をあげようと四苦八苦。
ところで、「軟口蓋って本当にあがるの?」と、素朴な疑問を持ったことはありませんか?
そこで検証しました。
まず、解剖学。
軟口蓋は、硬口蓋から続く軟部組織で、直接関与する筋肉は口蓋帆挙筋のみです。
小さな筋肉で、役目としては、嚥下と連動して軟口蓋を上げます。
そう、主に嚥下(食べ物を飲み込む運動)のときに使うのです。
ここを持ち上げて、食べ物を咽頭に送り込みます。
では、意図的にこの筋肉を収縮させて軟口蓋を大きく持ちあげることは可能でしょうか。
それも、発声時。

さっそく簡単な実験です。
軟口蓋をあげることができると思っているA氏と、苦手に感じているB氏にご協力いただきました。
まず、触診。
會田茂樹が、歌手の軟口蓋を触って、その動きを調べました。
薄手のサージカルグローブ(手術用ゴム手袋)を使用して不衛生にならないよう配慮します。
まずはA氏から。
「それでは軟口蓋をあげましょう」
「確かにあがっているが、思ったほどでないなぁ・・・」
「もう一度」
「やっぱり大きく動いていない。周囲筋がグッと硬くなるのは判断できるが・・・」
「それでは、のぞきながら触ってみましょう」
「おぉ、軟口蓋もあがっているが、顎関節が動いて口腔体積が増し、頬内部の筋肉が広がっているのが目立つ!」
「もう一度」
「おぇっ!」
反射が起きました。
それではB氏。
同じ触診ですが、軟口蓋はほとんど動きませんでした。
A氏のような口腔内の体積も増えていないと感じます。

次に、軟口蓋の中央部分と前歯までの距離を計ります。
目視で結構です。
その距離の2倍以上の長さの棒を用意します。
わたしは木製の舌圧子を用いました。
一方の先端に、粘膜を傷めないようガーゼを貼り付けます。
そして、ガーゼ部分を軟口蓋に優しく密着させ、正中部分は前歯に当てて、軽く固定します。
前歯はシーソーの支点のようなものですね。
したがって、軟口蓋があがれば、棒の反対端は下方向に移動する軌跡を残すはず。
準備ができたら、意識的に軟口蓋をあげてもらいます。
A氏から。
「さあ、しっかり軟口蓋をあげてください」
棒の先端は1.2センチ下降しました。
と言うことは1.2センチ軟口蓋があがったことになりますね。
A氏の感覚では『ググッと5センチくらい上昇した』と感じているようでした。
そしてB氏。
「軟口蓋を意識的にあげてください」
「・・・」
「がんばって」
「・・・」
棒は微動だにしません。
両氏とも数回試しましたが、さがることもあれば、ほとんど動かないこともたびたび。

これら二つの簡単な実験から「軟口蓋をあげてなさい」と言われ、①あげることのできるひとと、できないひとがいること、②あがっても1センチ程度で、効果が大きくなるのは口腔全体の体積が増すこと、がわかりました。
意図的に軟口蓋をあげることができると豪語しているひとも、結局、本人が感じているより簡単にあがっていないのかもしれませんね。
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赤色部分が軟口蓋(思ったよりちっちゃいですよ!)
クリーム色部分が口腔共鳴腔





追記:それにしても、歌唱法に関しては不正確なことが多いですね。イメージはとても重要ですが、それを成し得るには、正しいフィジカルから始まります・・・

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by aida-voice | 2016-02-21 21:58