痙攣性発声障害の喉頭触診


これまで多くの痙攣性発声障害(SD)に罹患する患者さまの喉に触れさせていただきました。
指先でわかることがたくさんあります。
最近のトピックを簡単に列記します。
①内喉頭筋の痙攣にもかかわらず、外喉頭筋(とくに甲状軟骨周辺筋群や肩甲舌骨筋)を強縮させている。
②喉頭の全体の位置が深い
③懸垂機構の筋群の動きが緩慢
④顎関節の影響を受けているケースがある
今回の報告でお伝えしなければならないのは、甲状軟骨を反転させて内喉頭付近に指を挿入し、痙攣(筋肉が強く縮む)する個所を特定できたことでしょう。
その手法です。
まず、準備が必要。
最初に、甲状軟骨の上角と下角を除いた体後端の二等分地点を水性マジックなどで記しておきます。
立位や座位では喉頭の位置が深いため、各種リハビリ機器で喉頭を弛緩させた後、顔があたる部分に穴が開いたベッドに腹臥位(うつ伏せ)に寝て行います。
または、首がフリーになるチェアベッドで、顔を真下に向くようセッティングして行っても良いと思います。
すると、甲状軟骨周辺筋がやわらかいことと甲状軟骨の自重によって反転が容易になります。
術者はベッドの下にもぐりこみます。
対面する格好で寝ても良いでしょう。
左手の母指示指で甲状軟骨両翼のエッジをつかみ、右にスライドさせながら時計方向に反転させます。
喉頭隆起が45度回旋したところで止め、母指を外します。
右示指の先端を、先に記した地点のやや上から滑らせるよう差し込みます。
やや上では曖昧すぎますね。
女性なら1~2㎜、男性なら2~3㎜が目安。
正しい位置が大切です。
その状態で苦手な言葉を発してもらいます。
示指の先端に、筋肉が硬く縮む瞬間を感知できます。
気をつける点があります。
甲状軟骨を反転しすぎると、発声が困難になったり各筋にテンションがかかって触診が難しくなったりしますのでご注意ください。
また、健常者で同じチェックをして、違いを知っておくのも重要です。
ほんの極小さな動きです。
大概は見逃すはず・・・
相当のトレーニングが必要。
初めてトライして成功する術者は皆無です。
日々喉頭を研究し、何千回も何万回も反転させて、やっと達成します。
血の滲むような努力が要ります。
話を戻し、右が終わったら左です。
きっと、左右差があることに驚くでしょう。
もう一点、大切な注意事項。
甲状軟骨反転時に反回神経麻痺を引き起こす可能性があります。
とくに深奥タイプの場合、危険度は高まります。
反転時の圧挫が原因です。
正しいテクニックの動画や写真もありますが、むやみやたらに真似しないよう掲載は控えます。
なお、この手技を行ったからと言って、痙攣性発声障害を完治させることはできません。
治療に関しては専門医にご相談ください。
2010年現在、痙攣性発声障害に対して有効な治療を行っている優秀な医師は、一色先生はもちろん、東京医科大学の渡嘉敷先生とクマダクリニックの熊田先生です。
お大事になさってください。



ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)



追記:当サロンでは痙攣性発声障害や音声振戦症、その他の機能性発声障害に対する直接的な施術は行っていません。喉頭環境を整え、声を出しやすくすることで、症状を乗り越えられるようアプローチをしています。喉の運動能力が高まると、語彙や体調によって痙攣する感覚の違いが感じられるようになってきます。イメージでしかありませんが、どのあたりがどのくらい硬くなる(痙攣する)かもわかってきます。左右差までも。ここまで達成すると、言葉は悪いのですが『痙攣をごまかす』ことができるように発声できます。こうなれば、自分も楽ですし、他人から聞き返されるストレスもなくなります。あるSD患者さんは、初音が詰まるため、その音を無声で強く詰まらせ、その後に弛緩する一瞬を利用して、きれいに発声できるようになりました・・・。この手法には、喉頭周辺筋の恒常的な柔軟性とセンスが必須!
以下の写真は声帯開閉筋のプッシュストレッチングの様子
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~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2010-07-25 17:37