ささやき声は過緊張を誘発するか?


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発声医学の話(教科書)では、「ささやき声は、喉に力が入って、努力型発声を増悪させるので、やらないようにしましょう」とあります。
ささやき声は、声門閉鎖があるものの声帯を振動させず、声帯突起から披裂軟骨までの間隙から、息もれを利用して音を作り出す現象です。
ささやき声の実験を繰り返しました。
結果、二つの事実があることがわかったのです。
それは、「過緊張を伴うささやき声」と「脱力したささやき声」。
通常のささやき声は、声帯を閉じる力、振動させない力、披裂軟骨に近い部位を開く力を得るために緊張度合いが高まります。
さらに判明したことは、多くのケースで、甲状軟骨を押し込んでいたのです。
これは推測ですが、披裂軟骨後部を頚椎方向へ圧をかけることによって、声帯後方を開く補助をしているように思います。
ささやき声とはやや異にしますが、有声音の通常発声の状態で、甲状軟骨を押し込むと無声音傾向になります。(負傷しないように・・・)
さて、ほとんどの方々は、このような過緊張の発声をしていました。
筋硬度計で、有声音とささやき声のときの喉頭周辺筋の硬さを計ったところ、明らかにささやき声のときに、硬さが増していました。
ところが、少ない率ですが、その逆のひともいました。
耳を澄まして聞くと、ささやき声の質が違うことに気づきました。
それは、ささやき声の音を喉頭や咽頭で作らず、口腔で構音していたのです。
きっと、声門を開大し、声帯より上の軟部組織を上手にコントロールしているのでしょう。
詳しく調べると、舌奥と上咽頭の形状を自由に変化させての造音タイプと、口腔前半分空間と舌と歯と唇(くちびる)を用いた造音タイプがあることが判明しました。
なるほど、こんな手法もあったのですね。《厳密には、ささやき声の種類として数えるのは間違いかかもしれませんが、聞こえの様子からささやき声の一種として検証しました》
この場合の喉頭周辺には力が入っていません。
口周辺に意識が移り、むしろ喉には柔軟性があります。
この事実から、以下を提唱します。
①声帯結節やポリープの場合、声帯運動そのものを阻止するのが目的ですから、上記どちらの手法でも構わないと考えます。ただし、前者の手法のささやきが長期間にわたると、慢性的な過緊張発声あるいは努力型発声に慣れ親しんでしまいかねません。十分お気をつけくださいね。
②心因性声失症の場合、これまで多くの患者さまに接し、喉頭周辺筋の超過緊張を呈するのを確認しています。有声音で会話するのが困難なため、可能な限り、後者の手法のささやき声をお薦めします。わたしが携わって快癒した二大アプローチ法は「喉頭の柔軟性確保」と「呼気圧の増大化」でした。この柔軟性のカテゴリーの一環として、喉頭に力を入れない小声やささやき声を求めました。
結論として、ささやき声は過緊張を誘発しますが、希少ですが力の入らないささやき声も存在することもわかったのです。
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追記:以前、ある先生(耳鼻咽喉科開業医)から「ささやき声は力が入っていないような気がするのだが!?」とご意見をいただいたことがあります。一度もお会いしたことなく、メールでやり取りしましたが、この先生の素晴らしい着眼に舌を巻きました。お見事です!
by aida-voice | 2016-02-11 15:23