ほしいままの裏声を!


声を大切にしているひとなら、声帯の粘膜振動のみで発せられた声が『裏声』であると知っていることでしょう。
そう、初心者の皆さんの理解を最優先して、大胆かつ簡潔に解説すると以下のようになります。
◆声帯は、筋肉と粘膜から作られている。
◆声帯筋をおおうように声帯粘膜が存在している。
◆地声は筋肉の振動である。
◆裏声は粘膜だけの振動で、筋肉は振動していない。
◆問:裏声のとき、なぜ筋肉は振動しないのか? 答:次の①②を無意識または意識的に行っている。なお、③のみ無自覚。①声帯筋肉を硬化させている、②声門下圧が弱い(つまり呼気が少ない)、③喉頭過緊張の存在
◆ミックスボイスは声帯筋と声帯粘膜の積極的な同時振動である。秀逸な歌手は、地声:裏声=8:2や地声:裏声1:9など、その割合を自由にコントロールしながら発声している。
実際は、もっと複雑です。
声帯筋の五層構造の存在、粘膜との境界線の個体差、声帯粘膜による声門閉鎖の割合、声帯靭帯の硬度、披裂軟骨の回旋域とその運動性能、呼吸の癖、Double vibrationの仕方などが関わって、地声と裏声が作られています。
それゆえ、ひとそれぞれの音色であり、基本的な部分以外は誰一人として同じ発声方法でもありません。
つまり、同じように聞こえる音声でも、全員が同じやり方で声を作っているのではありません!
皆、異なるのです。
したがって、それを見極めたうえで歌唱技術を習得することが重要になります。
肉体的構造および機能が、その歌唱練習法に合致すれば、歌唱力は伸びるでしょう。
しかし合わないひとは、絶対に伸びない。
世の中の万人に必ず効果のある歌唱法は存在しないことになります。(ダイエット方法と同じようなものです)
自分の喉(フィジカル部分)に合った歌唱法を見つけてくださいね。
でないと、時間と労力の無駄になりますよ。

下の絵は、優秀なオペラ歌手の裏声発声の状態です。
喉頭ファイバーの映像を絵画にしました。
この歌手は、若干の披裂部緊張が存在していましたが、十分に濡れた声帯粘膜の振動は見事で、検査しながら裏声の質の素晴らしさに鳥肌ものでした。
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さて、普遍的な裏声の方法・・・、と言うより裏声を出しやすくする方法をお伝えします。(出し方は省きます)
美しい裏声は、声帯粘膜の繊細な振動効率に比例します。
粘膜の最大の特徴は、水分を多く含んでいること。
この水分含有量が減少すると、しなやかな振動ができません。
そこで、方法。
①声帯粘膜の保水機能を促進する(ヒアルロン酸のたっぷり入ったボイスケアサロン声専用キャンディの使用など)
②水分補給をこまめに行う(飲むと言うよりは、ほんの少しの水で喉をうるおす)
③喉頭周辺の柔軟性を獲得して血流を増やす(とくに上喉頭動脈)
④肩まわりのストレッチング(僧坊筋などの筋運動を活発にして循環機能を上げる)
ここでは、裏声の出し方でなく、裏声が出やすい環境要因を作り上げることを述べています。
それには①が必須ですね。
カラカラに乾燥しきった粘膜では、振動しないことは容易に想像できるでしょう。
例えるなら、プルプルのこんにゃくの水分が飛んでカチカチになってしまったら、美味しくなくなってしまうようなものでしょうか。。
みずみずしい粘膜が出来上がれば、ほしいままの裏声に近づき、トレーニング次第では、どのような美声もミックスボイスも簡単になります。
ご精進くださいませ。




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)



追記:『頭声』や『胸声』および『当てる』などの概念は十分に研究しました。しかし、言葉と実際の医学的メカニズムが一致しにくいため、当サロンでは多用していません。やはり、正確な根拠に乏しいイメージの分野となっています。頭骸骨や胸骨が振動して直接音を作り上げることは無いからです。さらに、身体の特定部分のみが共振してスピーカーのような音源となることもありません。もちろん、歌唱上達方法の一環で、感覚として伝えるためのワードツールとしては的確かつ有効だと思います。ご報告まで。




~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2010-05-24 18:26