正しく知ろう… 声帯のこと


一部の歌唱指導者から、「声帯を伸ばしたり縮めたりして調整しましょう」 とか 「音程を維持するためには、声帯にやや力を入れて、同じ長さに保つのが秘訣です」 などと教えられることがあります。
声帯を、意識的、かつ、動きの感覚をもって、運動させる様子がうかがえますが、できるひとは、はたしてこの世に何人いるのでしょう。

声帯を伸ばすのは、どの筋肉?
では、縮めるには?
その調整する筋肉の存在と方法は?
どうやれば声帯に力を入りますか?
振動する声帯を一定に保つには?
そして、それらを正確に動かすことができますか?
あなたは声帯の本当の大きさ (長さ) を知っていますか?

これまで多くの歌手に会ってきましたが、上記を正確に言い当てるひとに出会ったことがありません。
感覚的に 「いま、右の声帯が伸びた」 とか 「声帯の前の方が開いた」 とおっしゃるひとがいます。
本当にわかって言っているのでしょうか!?
これまでの研究上、それを正しく言い当てるのは非常に難しいと思います。
発声は、科学的な運動にのっとり、その上にイメージや気持ちが添加され、心を打つ歌になります。
もともと、声帯は発声のためでなく、それより先に水や異物が入らないための防御肉壁だったと言われています。
人間は、それを進化させてきました。
しかし、まだまだ使い勝手が悪いのも事実です。
身体の他の部分のように、思い通りにコントロールできていません。
けれども、その性質や形状や動きなどを正確に知れば、ある程度は使いこなすことができるようになります。
もちろん、感性だけで使いこなしているひともごく稀にいます。
そのようなひとは、喉頭に柔軟性があり、それがゼロポジションとして運動性能に優れている御仁でしょうね。
そう、天才と言われる人々です。
でも、そのようなひとはなかなかいません。
ほとんどは、喉頭の筋肉群が硬かったり動きが悪かったり、運動能力が低いケース (多くは正しい動きを知らないだけなのですが・・・) の人々ばかりです。
己の声帯を知り、喉頭をケアすれば、可動性はアップし、どんな声も自由になり、アッと言う間に歌がうまくなります。
それまでは、難しく、特に高音や PP の部分は、構えなければ出なかった音も、鼻歌程度に軽々と出てきます。
あまりに解放され、歌っている感覚もないほどでしょう。
喉もリラックスし、呼吸が深く長く、声に安定感があり、見ていても身体に余裕があります。
最後は、心を歌詞や曲想に集中するだけです。
勝手に極上の声が出てきます。
それを聴いたひとは、感動の渦に入り、きっと涙が止まりません。
それほど人間の声は美しく素晴らしいのです・・・



ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)




追記:真の声帯写真
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摘出喉頭解剖から検証した声帯とその触診

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拡大シャープ画像 (水色楕円部が声帯ヒダ:指と大きさを比べてみましょう)



大きさを知ってください。上写真カラー部分の中央の小さなヒダ状のふくらみが声帯です。なお、下の水色楕円部が拡大画像。指は私、會田茂樹の人差し指です。比較してみましょう。本当に小さいのです。この山並みが、伸びたり縮んだりする幅は、数ミリ程度でした。皆さんは、声帯を喉頭ファイバー写真でよく見かけるはず。この喉頭ファイバーは、細く自在に動くファイバーの先端のカメラが声帯の真上まで達し、クローズアップして映し出すため、ほとんどのひとは、声帯はずいぶん大きいと思い込んでいます。しかし、実際は、こんなに小さいのです。「芯のない裏声発声するときには声帯粘膜のみを振動させて・・・」 などと言われていますが、あなたにはどこが声帯粘膜か判断できていますか?
なお、衝撃写真とならないよう、声帯近辺のみカラーで、周囲を白黒としました。米国メイヨークリニック喉頭機能外科教室で、摘出喉頭(解剖は医師)による触診研究です。医学の発展を願ってご献体くださった心優しいこの方に、心より感謝申し上げます。





~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2010-04-01 06:08