裏声と表声の繰り返し発声で本当に歌がうまくなる?


この問いの解答は、基本的に正解です。
基本的とは?
そうですねぇ・・・、まちがってはいないのですが、うまくなるのが難しい可能性も大いにあると表現した方が正確でしょうか。
つまり、簡単にはいかないことも多いのです。
それを詳しく説明しましょう。
まず、このトレーニングは、輪状甲状筋を鍛えて、ピッチのコントロール性をアップさせるのが目的です。
裏声発声のときは、輪状甲状筋に力が入り、表声のときは輪状甲状筋をゆるめます。
これがスムーズにできれば、高い音・低い音は自在になり、歌はうまくなるでしょう。
輪状甲状筋に力が入ると、筋肉は収縮して、輪状甲状関節を動かします。
輪状甲状筋は垂部と斜部の二本にわかれているので、動きの種類は、甲状軟骨と輪状軟骨の共に前縁を近づける屈曲と、甲状軟骨と輪状軟骨をスライドさせて距離を長くする、この二つがあります。
その二つの複合的動作によって、声帯を伸ばします。
声帯が伸びると、ゴム紐をギューンと伸ばして弾くと高い音が出るように、高音の発声となります。
低音に戻す場合は、外側輪状披裂筋の活動と声帯筋の若干の収縮が起こります。
さて、輪状甲状筋ですが、構造から推察するに、垂部は強く跳躍的な高音に、斜部はゆっくり繊細に伸びる高音に、むいています。
そして、重要なポイントがあります。
この輪状甲状筋が正しく動くには条件があります。
①甲状軟骨および輪状軟骨の体部および後縁に付着する筋肉に柔軟性が必要。
もし、硬い場合は、輪状甲状筋より強靭なため、輪状甲状関節は動かず、声帯の伸び縮みはコントロールできません。
②輪状甲状関節が動かない (あるいは動きが悪い) ケースが多々あること。
理由は3つ。
◇左右の関節の動きがバラバラで可動不全を起こしている。
◇輪状甲状関節上の関節包や靭帯が硬く、関節が動かなくなっている。
◇何らかの理由で、輪状甲状筋を司る上喉頭神経外枝が圧迫を受け、輪状甲状筋の動きが悪くなっている。ここでの理由の原因として、甲状腺腫瘍や癌、甲状腺摘出手術、絞首や叩打などの外傷、ウイルスなどの感染が挙げられます。
その他にも、無理な高音発声や酷使疲労により、筋損傷および筋膜炎によって、輪状甲状関節の動きを阻害する症例もありました。

結論として、裏声と表声のトレーニングをすれば輪状甲状筋が鍛えられ歌がうまくなる可能性は十分にありますが、なかなか上達しない場合は、輪状甲状関節が動いていない確率が高くなります。
そのようなときは、まず先に輪状甲状関節が自由に動く環境を整えましょう。
日本人は10人に8人が、喉周辺が硬く発声していると言っても過言ではありません。
この状態は、決して異常や疾病ではありません。
普通に会話でき、歌うこともできます。
日常生活には、何ら問題ありません。
ただ、歌をうまく歌うとか、美声でしゃべるような、音質の繊細なコントロールが多少困難になってきます。
したがって、喉周辺に柔軟性がないのは病気ではなく、単なる筋肉の“癖”なのです。
歌がうまいひと、声が良いひとの最大の身体的特徴は 「のどがやわらかい」 ことです。
あなたも喉周り柔らかくして、素晴らしい歌と声を獲得してください。
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ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)





追記:輪状甲状筋が正しく使われているかどうかを知る方法です。精密な触診で筋腹を探ってください。①筋線維が判断できる筋厚があること、②垂部と斜部の存在を判別できること、③地声で発声し、徐々にピッチを上げていくと、甲状軟骨下端と輪状軟骨上端の間隙がせまくなるのを確認できること、の3点でしょう。これらが確認できない場合は、声帯筋を強直させて高音を出している可能性が大ですね。この高音発声では、①金属音的な硬い音になる、②コントロールが難しい、③すぐにひっくり返る、④音が割れる、⑤短時間で声がれ (かすれ声) になる、⑥ブレスが短い (息が続かない)、⑦スタミナがない、⑧発声練習 (喉が温まるまで) に時間がかかる、などの状態があります。これらの状態の声では、歌う本人もハードで辛いでしょうが、聴いてる側はもっと疲れてしまいますよ・・・
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《解剖写真加工絵》
ていねいに黄色楕円部を探ると、すべてがわかります
メイヨークリニックの摘出喉頭(解剖は医師)による触診のおかげで
軟部組織に対する匠のタッチング・テクニックを身につけました
ご献体いただいた仁愛な方々に、心より、心より感謝申し上げます






~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2010-03-16 00:27