甲状腺手術後の症状から解く発声時の不安定さ


感性豊かな声楽家が歌や声に関してよく述べる内容に、「昨日は調子良かったが、今日はちょっと違う・・・。きっと昨夜の夕食でカレーを食べたからだ。これからは一生カレーを食べないようにしよう・・・」といったものがあります。
はたしてカレーのせいで声が変化したのでしょうか。
声が悪くなる恐怖に抗うためにジンクスを形成してしまいがちです。
実は、この変化もほぼ解明できています。
それは甲状腺手術後の患者様の様子から解釈することができます。

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甲状腺疾患によって手術をすると、声帯を司る反回神経には影響を与えていなくても、「何となく声が出し辛い」とか「高音が出難くなった」と訴える患者様が大勢います。
これは甲状腺上に存在する広頚筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、肩甲舌骨筋が切傷を受け、その部位が瘢痕化して各軟部組織が癒着する結果です。
また高音がでないのは、甲状腺直下にある輪状甲状筋が傷ついたり出血による血腫で圧を受けたりして運動性能が阻害されるからです。
これらは、人間の筋肉の中でも最も小さく細いものばかりです。
また、声がこれらの筋肉の複合運動による産物であることを考えると、どこかの筋肉が少し可動性を失っただけで、声が変化したり声を出す感覚が違ったりするようになるのは容易に想像できます。
重要な順に、胸骨舌骨筋、輪状甲状筋、肩甲舌骨筋です。
胸骨甲状筋は胸骨舌骨筋でリカバリーできるため、このカテゴリーからは外してもよいでしょう。(胸骨甲状筋は外皮から触診判別することができません)
また、広頚筋は発声に関与しないので除外します。
したがって、昨日は胸骨舌骨筋の動きがスムーズだったが、今日になってその動きがほんのわずか鈍っただけで声が変わるのです。(その微細な変化に気付く感覚豊かな人でないと感じないと思いますが・・・)
そこで動きが鈍るとはいったい何が起きたのか?
そのキーワードが筋膜です。
筋線維や筋原線維が損傷しない微弱な外力や圧ほどでも、ときに筋膜の不活化が起こります。
これが要因の一つではないかと思っています。
次に、各筋肉の動きが悪くなるとどうなるのか?
輪状甲状筋は高音発声に関与しているため高音が出難くなることは周知の事実ですね。
では、胸骨舌骨筋は?
肩甲舌骨筋は?
このあたりは企業秘密とさせていただきます。
ともあれ、声の日々の不安定さは、これらの筋肉の変化に起因します。
では、なぜ日々変化するのでしょう?
完全には解き明かしていませんが、食べ物ではなく、体調・気温や湿度・睡眠・ストレス・疲労などによって変わるようです。
そして重要な一つに睡眠があります。
その中でも寝返りの存在です。
人は必ず寝返りを打ちます。
その際に極小な筋に多少の負荷がかかり、筋膜に影響を与えることもあるでしょう。
残念ながら検証が長期かつ大仕掛けになるため結果を出すまでに時間がかかりそうです。
ただ、日々の声の変化を気にしている感受性に富む人に、その人の頭や頚椎に合った最適な枕を与えると、声の変化が少なくなったと大喜びされることから、寝返りを含めた睡眠の質も原因の一端ではないかと考えられるでしょう。
枕選びは慎重に!




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)




~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2009-07-13 11:49