伊藤病院での講演原稿 一部公開!


4月21日に甲状腺専門疾患の伊藤病院で行った講演の原稿の一部を発表します。
甲状腺手術後に声で悩む皆さまのお役に立てればと願っての公開です。



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【甲状腺手術後、反回神経麻痺を伴わないが、何となく声が出し辛い症例へのアプローチ】

本日は、お招きいただきありがとうございます。これからお話しすることは、医学的に立証された治療ではなく「施術」のため、どうか、お気軽にお聞き流しくだされば幸いでございます。
現在、港区白金台で會田整骨院付属ボイスケアサロンを開業しており、また、甲状軟骨形成術で有名な一色信彦京都大学名誉教授の一色クリニックでも月2回の外来を持っています。今日は、私が行っている施術内容をごく簡単にご紹介したいと思います。
まず、どのようなものなのかを知っていただくために、最初に、ここまでの経緯をお伝えします。私は、骨・筋・腱等軟部組織の治療を行う国家資格:柔道整復師です。平成2年に小さな接骨院を開院しました。立地条件が良かったのか、毎日200人以上の患者さんが来る院となり、これまで、実に多くの軟部組織にタッチしてきました。その後、いくつもの分院を開院し、さらに飲食店・物販店・学習塾・コンサルタント会社など小規模コングロマリット企業を興し、最終的に、私の仕事は週に一日の決済業務だけとなりました。時間に余裕ができたため、その頃から、最も好きであったオペラを本格的に習い始めました。凝り性ゆえ、複数の音楽教師からの指導を受け、日々、歌唱に精進しました。誰よりも上手くなりたい欲求が強く、そこで、友人の耳鼻科医に「どうしたら、もっと声が良くなるのか?」など問い詰めたりもしました。彼曰く「喉の病気や障害に対しての治療は確立しているが、どこも悪くない喉を良くする方法は分からない」と言われ、「ならば・・」と、いろいろ研究を始めてみました。そこで、「声は、声帯も含め、すべて軟部組織が担っている」ことを再認識し、喉頭周辺の軟部組織、特に筋肉を探求しました。私は、過去に、何万もの四肢躯体の軟部組織を触り、触診には長けていると思っていましたが、思いのほか喉頭の筋肉は小さく繊細で、簡単にはアクセスできませんでした。そこで、触覚を重点的に研究している聖徳大学の山口創先生にアドバイスをいただいたり、砂粒を指先の触覚だけで大きい順に並び変えたりするトレーニングなど、徐々にアクティブ・タッチの精度を練磨していきました。また、アメリカのメイヨークリニックの喉頭機能外科教室で、数多くのレアな摘出喉頭の触診を繰り返し、筋肉はもちろん甲状腺から甲状軟骨周囲の神経や血管まで触り慣れることができました。その結果、外皮から軟部組織の状態を判別できるようになり、どの筋肉がどのように発声に関与しているかが、分かるようになりました。外喉頭筋や前筋・内筋のバランスを調整したり、ピンポイントで筋活動能力をアップさせたりすることで、声を変化させることができるようになったのです。もちろん、喉頭機能に関与する発声能力のポテンシャルを高めることしかできませんので、歌唱のテクニックや歌心を養うことはできません。最初は、完全な趣味で、私の歌手仲間だけに施術を行っていましたが、診て欲しい人が激増したため、3年前に声の専門院として始めました。その後、一色先生から特別外来を要請され、一色クリニックで研究および研鑽させていただき、音声障害にも有効であることが分かりました。
現在、院には、二つのカテゴリーの患者さんが、全国また海外からも通院してきます。
1:TVや舞台で活躍する歌手や俳優、TV局アナウンサー、声優、オペラ歌手、歌舞伎や能、劇団四季、宝塚歌劇団など声を良くしたい人
2:痙攣性発声障害、音声振戦症、過緊張性発声障害などの機能性発声障害、および、喉頭・甲状腺・頚部の、手術後の声の改善目的の人 (ただし当院は病院ではないため病気治療ではなく発声能力向上の施術を行っています)

今回は、伊藤病院院長:伊藤公一先生よりお招きをいただきましたので、当院で頻繁に行っている甲状腺疾患にまつわる声の施術についてお話します。それは、甲状腺の手術後、反回神経麻痺は伴わないが、何となく声が出し辛い、あるいは、高音が出なくなったなどの症状に対する独自のアプローチです。もちろん、反回神経麻痺による甲状軟骨形成術Ⅰ型後の各種リハビリも頻繁に行っております。著名な例では、ドイツ・ザールランド歌劇場・元専属テノール歌手:ベー・チェチョル氏の喉頭周辺筋可動改善の施術を行い、この様子は、一昨年と昨年、NHKのTV番組で特集として放送されました。
さて、専門の先生の前では釈迦に説法となりますので、原因や論理などは割愛し、施術の様子をごく簡単にお伝えさせていただきます。これまで時間やコストなどの労力を惜しまず、徹底的に調べ、関与する筋肉や特異な状態など、かなり詳しく分かってきていますが、医療と言うより「声のエステ」に近いため、概要のみお伝させていただきますことをご了承ください。第52回、日本音声言語医学会でも、おおざっぱな「取り組み」報告のみ口演いたしました。また、最近は医師から紹介されて来院する患者さんも増えていますが、3カ月先までギッシリ予約が埋まり、新患予約を受け付けない期間もあるほどです。予約が取れないと、お叱りを受けますが、施術の効果を最大限に希求するため、一人に2時間ほど時間をかけて診ています。受診希望の声でお困りの皆さまには、大変ご迷惑をおかけしております。

甲状腺疾患専門医である皆さんにも経験があると思います…。手術後の患者さんから「何となく声が出難い」「しゃべり辛い」「話しているとすぐに疲れる」「詰まる感覚がある」「手術した部位が突っ張る」「大きな声が出ない」「かすれる」「声が割れる」「高音が出ない」「音程が取れなくなった」「すぐ咽る」などです。丁寧な手術を行い、反回神経は正常で、実際、声は確実に出ており、聴き取りも悪くなく、喉頭ファイバーなどの各種検査でも声帯に全く異常がないものばかりです。でも、患者さんは気になっているのです。特に、歌手や多少神経質な人に多く見受けられます。これらは感覚レベルの問題であり、的を射た処方も見当たらないため多くは「気のせいですよ」となってしまいます。

それでは、実際の施術の様子です。まず、緻密な触診を行います。手術創周辺をフェザータッチで探ると、大きいものではゴマ粒ほど、小さなものでは細い髪の毛の断片ほどの、しこり状の瘢痕や、筋肉と筋肉がほんの少し癒着して、動きが悪い部分を見つけることができます。さらに発声時の喉頭をビデオ撮影して、外皮からの筋肉の動きも調べます。また、必要に応じて、各筋の硬さを筋硬度計で測定したり、上喉頭動脈や上下甲状腺動脈の血流量を測ったりもします。
そして、症状の状況を2つのステージに分けます。
1:術後の軟部組織の瘢痕・癒着が直接原因のもの
2:それらが元で筋バランス異常を呈しているもの

1の、瘢痕・癒着が原因の場合は、その部位を特定します。特に多いのが胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、肩甲舌骨筋です。また、それらの複合的な癒着によって輪状甲状関節の可動域が消失していることもあります。この場合は高音が出難くなります。
治療として、最初に物療を行います。まずは、超音波治療器を用います。当該患部にピンポイントで3MHz1.5Wを5分前後照射します。なお、振動数を減らして1MHzで行うと咽てしまいます。特に、外喉頭筋硬化傾向の人や神経過敏の人、そして、高齢者に多く見受けられます。1秒間に300万回の微振動を皮下浅部に送りこみ、軟部組織の柔軟化と、ジュール熱による血流促進を狙います。その後、瘢痕・癒着部位を探し出して、繊細な喉頭クリニカルマッサージを行います。
次に、2の、瘢痕・癒着によって、喉頭周辺の各筋のパワーバランスが、ほんの少し狂い、発声し辛くなるケースも多々あります。触診で、左右の筋バランスや筋腹の厚みを探って判別します。また、輪状咽頭筋の硬縮を発症するケースもあり、この場合は「詰まる感じ」を訴えます。主に、手術創周辺筋がコントロール不全に陥りますが、最近の調査では、反対側の茎突咽頭筋もテンションを増し、大きく関与していることが判明しました。さらには、喉頭が捻転するケースもあります。バランス異常で、さまざまな喉頭環境になります。ここで簡単に図解してみましょう。【図解】
この症例の物療は、微弱電流を用います。低周波のような強刺激でなく、300μAレベルの低刺激の可変パルスで、細胞を活性化させ、筋肉の可動性を高めます。そして、20分の通電後、喉頭筋の力学的均衡をデザインし、該当筋にピンポイント・ストレッチや喉頭クリニカルマッサージを敢行して、各種改善をしていきます。また、筋バランスを是正するために、弾性テーピングを筋幅に合わせて細く裁断し、起始停止を十分に考慮しながら貼付して、動きを補助したり、逆に保護の目的で動きを阻止したりする療法も時に施します。
その他の物療として、喉頭牽引器:これは整形外科で用いる頚椎牽引器を改造したものです。頚椎の牽引は通常10~15度の角度ならびに体重の7分の1程度の強さで引っ張りますが、喉頭専用では約7度の角度ならびに3~6キログラムと弱い力の間欠牽引を行っています。光線照射治療器:直線偏光近赤外線を患部および反回神経の走路にダブル照射します。これによって直接的ならびに間接的な血流増大効果と、細胞機能正常化作用によると思われる効能があります。また、星状神経節への照射も喉頭のリラックス効果を導き出します。低周波治療器:家庭用の電圧の低い低周波治療器をさらに改造して、個別にターゲットを絞って通電します。徐痛が目的ではなく、どちらかと言うと、筋力アップと筋可動性向上を目指しています。また、過緊張性発声傾向がある人に、いきなり低周波を用いると、さらに筋硬度を増すことが分かってきました。この観点から低周波パルスは注意が必要です。その他にも、ホットパックやアイスクリッカーなどの温熱および寒冷療法、磁気器具療法などがあります。これらの物療を、症状や必要に応じて行います。

喉頭クリニカルマッサージなどの手技の時間は5分ほどです。アロンソンは、母指と中指で行うよう言っておりますが、当該施術はミリ単位で行うために、私は示指先端部と母指先端やや尺側部で行います。求める筋肉を探し出し、的確かつ繊細に軽擦法と揉捏法を行っていきます。指先の訓練によって、相応の筋肉や組織が判断できます。現在、発声に関与すると思われる私が判別できる筋組織は、顎二腹筋の後腹(前腹は顎舌骨筋と同化しいるために困難)、茎突舌骨筋、舌骨舌筋、オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、茎突咽頭筋、胸鎖乳突筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋、輪状甲状筋、甲状軟骨をやや反転させ後輪状披裂筋の一部、斜披裂筋の一部、横披裂筋の一部、外側輪状披裂筋の一部、上中下咽頭収縮筋の一部、輪状咽頭筋の一部、前中後斜角筋、広背筋、僧帽筋、肩甲挙筋、頭板状筋、大小喉頭直筋、上下頭斜筋、大小菱形筋、大小胸筋、鎖骨下筋、前鋸筋の一部、肋間筋、肋骨から指先をカールさせ横隔膜の一部、咬筋、側頭筋、外側翼突筋の一部です。やはり浅在性の筋がメインで、深在性の組織は困難です。また、皮膚や脂肪の厚み、あるべき軟部組織が無かったり、癒合して一つになっていたりと、個体差も非常に激しく、通常は判別可能であると考えられる筋でも、触れられないことも多々あります。また、ピンポイント・ストレッチでは、ときに両手指を用いたり、甲状軟骨の反転移動や輪状甲状関節の最大可動を利用したりして、各筋に対し正確にアプローチしていきます。脆弱な筋肉ゆえ、強く長時間のマッサージやストレッチングは必要ありません。もし、強く、また、不正確に行ってしまうと、次のようなケースが起こることがあります。①軟部組織の損傷:喉頭内外の筋膜や筋線維を傷付け、肉離れ的な痛みを伴い、声が一層出し辛くなります。特に、声に敏感な声楽家やオペラ歌手には要注意です。②頚動脈洞の血管神経性反射の誘発:マッサージの途中で失神します。触り慣れない人が行うと、ずいぶん遭遇します。③反回神経の損傷:実際、自分自身で喉頭を強く揉んでいて、反回神経麻痺の診断を受けた患者さんを数名診てきました。④最後に関連性は定かではありませんが、慢性甲状腺炎の急峻症状露呈です。ご自身が甲状腺疾患に気付かない状態で起こりました。これまで数千の喉頭を触ってきましたが、この1例のみです。以上のような禁忌および副作用があります。

現在、このような特殊な治療を行っております。当院治療後の即時効果は大きく「あぁ、声が出しやすい…」と、ほぼ100%の方々から高評価をいただいております。ただし、その効果は数時間~10日ほどで、残念ながら元の「声の出し辛い」症状に戻ってしまいます。それでも複数回の治療で、瘢痕部が徐々に消失し、癒着部分が剥がれて各筋が正常に動き出し、声の症状が改善、もしくは、寛解していきます。手術後、数年経過して固着してしまったものは改善が難しいのですが、1年以内なら、かなりの確率で快癒に向かいます。ここでの快癒の定義は、手術後の瘢痕・癒着が完全に無くなるのではなく、発声が苦にならないということです。私が一色クリニックで外来を開設したころは、一色先生の手術でも、フラップマッスルとしての胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、甲状舌骨筋などはクロージングの際に筋肉の断片を適当に集めているだけでした。その後、「會田先生に会ってから瘢痕や癒着の重要性を再認識した。できるだけ筋組織を傷つけないよう心掛けなければ。」とおっしゃっていただきました。誠に光栄だと感じております。

最後に・・・、甲状腺の病気、特に腫瘍や癌は命にかかわるため、声より優先されるべきものですが、手術の際に、反回神経の損傷だけでなく、周辺の筋肉にも、ほんの少しご配慮をいただくと、患者さんの幸せが増えるのではと思います。
稚拙な講話となりましたが、本日はお招きいただき、伊藤公一先生には心より感謝申し上げます。これまで、多くの患者さんの手術創を触診してきましたが、伊藤病院で手術された患者さんの瘢痕や癒着はごく小さく、丁寧かつ正確な手術がなされたことが伺え、当院に来られたほとんどの方の声が改善されていることをご報告申し上げます。

もう一つ。当院ではエリート・ボイス・ユーザーの方々に「声が良くなる」オリジナルのキャンディを販売・提供しています。消炎や除痰のための薬ではありません。「喉」を良くするのではなく、「声」を良くします。それが、このボイスケアサロン声専用キャンディです。優秀な歌手ならびに薬品会社と飴屋と共に、試行錯誤を繰り返し、食品ヒアルロン酸を用いて最適なバランス配分を割り出しました。食品ヒアルロン酸の中でも極上の品を選んだため、販売価格が1個420円となっております。今年から売り出しましたが、飛ぶように売れ、ときに販売制限や受注生産になります。今から皆さまにお配りしますので、よろしければお召し上がりください。




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)




~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2009-05-16 14:28