ソプラノ歌手の加齢現象《二つの時期》【過去記事再掲載】




これまで多くのソプラノ歌手に会ってきました。
合唱程度のアマチュアから国際的に活躍している有名大歌手まで。
年齢も様々です。
下は11歳から上は92歳まで。
気付いたことがあり、検証してみました。
それは加齢に伴う声の変化があることです。
そして大きく二つの時期があります。




第一期です。
10代は何も考えず自然にできていたコロラトゥーラが、20代後半になって突然できなくなってしまいます。
急変過ぎて何が起こったのか分からず悩みます。
どんなに練習しても、指導者を変えても良くならず、声楽をあきらめてしまう人もいます。
どうしてこうなったのか?
解明しています。
また、改善方法も分かっています。
答えは・・・、10代および20代前半のしなやかな喉頭の筋肉が、加齢によってバランスを崩してしまうのです。
特に甲状軟骨が良型の人に見受けられます。
繊細な高音のコントロールが不能になります。
皆さんは発声法を変えれば良くなると考えていますが・・・、それは違います!
筋バランスが狂っているのです。
音程の狂ったピアノやバイオリンを、どんなに弾きこんでも決して上手くなりませんよね。
これと同じです。
主に、輪状甲状筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋などです。
左右差も含め、微細なバランス異常を探し出して補正しましょう。
また、最新の研究では、上喉頭神経外喉頭枝の鈍麻によって輪状甲状筋の動きが悪くなるケースも多いことがわかってきましたよ!〔この原因も解明しつつありますが、根治は難しいと考えています・・・〕
そうすれば、元のように自由自在に歌えるはずです。




第二期として、40代後半から50代に起こる変化があります。
これこそ本当の加齢現象ですが、甲状軟骨をぶら下げている筋肉(主に茎突咽頭筋、顎二腹筋、胸骨舌骨筋、舌骨上筋群など)が弱くなって音程の可動能力を低下させます。
高音よりも低音で顕著です。
低音は、筋肉を弛緩させながら同時にパワーを入れて支えなければなりません。
支えきれなくて声になりません。
また、ときに高音発声時も我慢できず、硬化高音になったり音がひっくり返ったりします。
さらに閉経によって女性ホルモンが減少すると、声帯が萎縮傾向になりながら浮腫を併発するケースも多々あります。
これによって声のバタつきと嗄声(かすれ)が生じます。
この段階では、ソプラノらしい声楽発声は不可能になります。
おじょうずな方はテクニックでごまかせますが、かなり喉頭に力がかかりますので、過緊張性発声や喉詰め発声になり、長く歌っていると声帯結節が生じます。
喉頭周辺(上喉頭動脈と上甲状腺動脈)の血流も減少し、徐々にスタミナがなくなっていきます。
このとき、実際、納得のいく声ではなく、昔の良かった声を知っている聴衆からは落胆されてしまいます。
寂しいかぎりです。
しかし、これも改善可能です。
多くの症状に対処してきました。
それぞれのステージを正しく判別し、声帯粘膜可動性UPのためのヒアルロン酸補強を含め(声専用スーパーキャンディ)、適切な施術を行います。
筋力低下を起こしてから半年以内なら即時解決しますが、5年10年と苦しんでこられた方は、残念ながら改善に相応の時間がかかります。




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ソプラノ声域は、声質に繊細さと力強さが同居しなければ、聴く人の心を感動させることはできません。
変化が起こり始めたらお早めにご相談ください。
あなたの歌声はあなたのものですが、聴く人のものでもあります。
最高の状態の喉で臨まなければ、聴衆を裏切ることにほかなりません。
厳しい言葉ですが、これがプロなのです!






※2009年5月15日の記事




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)




~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2019-01-24 13:55