披裂軟骨脱臼の整復方法 Part1


今回は医療機関向けの情報です!

口や鼻から喉頭を経由して気管内チューブを気管に挿入する「気管挿管」によって披裂軟骨が脱臼することがあります。
また、喉頭外傷によっても起こります。
無理な発声が起因になったケースも遭遇しました。(病院勤務時、高音発声を乱用して脱臼した患者さんを診たことがあります)
その徒手整復法を公開します。
基本は、どの脱臼も同じなのですが、周辺軟部組織を弛緩することで正常な位置に戻っていく原理を応用することです。
肩関節や肘関節の脱臼と同じです。

まず、披裂軟骨と輪状軟骨の関節は主として鞍関節です。
これに似た関節は手根骨の各関節があります。
したがって舟状骨と月状骨の脱臼などがこれに当てはまります。

さて、話を戻し、披裂軟骨脱臼の整復です。
座位または腹臥位(ただし喉頭周辺を自由に触れる工夫が必要です!)がベストです。
最初、発声困難や疼痛で甲状軟骨周辺筋が緊張しています。
これを緩解しなければなりません。
特に輪状咽頭筋が硬縮していると、甲状軟骨が深いポジションになり、披裂軟骨尖および小角軟骨が頚椎前面部に触れるため、正常な位置に戻り難い環境になっています。
また、茎状突起から始まる筋(茎突咽頭筋、茎突舌骨筋、茎突舌筋)を緩めましょう。

次に、脱臼側の甲状軟骨翼を指腹で軽く押し込み反転させます。
その状態で、披裂軟骨の正しい位置を確認します。
そして、脱臼反対側の甲状軟骨翼を指腹で軽く押し込み反転させ、繊細な触診で脱臼状態を見極めましょう。
それを念頭に入れて整復をデザインします。

輪状軟骨甲状軟骨間を両指で狭めながら、その患者さんのパッサージョ付近の音域で発声させます。
一旦元に戻し、高音発声と同時に、輪状甲状関節をスライドさせながら屈曲させます!
ときに、ごく小さなクリック音と共に正常な位置にはまります。
これで整復完了です。

この前処置および整復には、相応の解剖知識と手技テクニックが必要です。
また、脱臼の程度や陳旧状態によって、100%の整復率ではないことを付記します。







ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)







追記1:披裂軟骨脱臼の整復は医師の指示の元に行います。また、喉頭の柔軟性(反転指差入)担保と新鮮外傷(受傷後1~2週間以内)であることが大切な条件となります。







追記2:Part2 もございます。さらに進化した内容です。ご確認ください。







~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。






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by aida-voice | 2009-04-26 16:44